「記帳代行」「会計ソフト」「クラウド会計」という言葉を聞いたことがあるけれど、どれを導入すればよいのか悩まれている人もいらっしゃるのではないでしょうか。
「記帳代行」「会計ソフト」「クラウド会計」のポイントとメリット・デメリットをわかりやすくご説明したいと思います。
そもそも記帳とは
税金を正しく正確に申告するためには、毎日の取引で発生する経費や売上などを帳簿に記録しておく必要があります。
この帳簿に記入していくことを「記帳」といいます。
この記帳には、その精度によっていくつかの方法がありますが、複式簿記にて精度の高い記帳をしている場合、青色申告をすることで、個人事業主の場合は特典として「65万円の青色申告特別控除」を受けることができたり、法人の場合は欠損金の繰越控除(赤字を9年間注1繰越すことができる制度)など税制面での優遇措置が設けられていて、税務署が一方的に修正するということもできなくなります。
注1:平成30年4月1日以降に開始する事業年度から欠損金の繰越期間が10年に延長されます。
手書きの時代は・・・
青色申告の場合、貸借対照表と損益計算書の決算書類の提出が必要になりますので、一般的には複式簿記による「総勘定元帳」や「仕訳帳」の帳簿が必要になります。
加えて、業種内容によっても違いますが、売掛帳や買掛帳、現金出納帳、経費帳、固定資産台帳などを備えておく必要があります。・・・手書きだと大変ですよね。
事実、昔は手書きだったので大変だったそうです。
一昔前の税理士さんを記帳屋さんというのも頷けます。記帳代行はこれら一切の業務を税理士が引き受けるサービスとして定着していきました。
会計ソフトの登場
これだけ帳簿の数があれば、記帳処理が大変なのですが、会計ソフトが登場することによって記帳業務が劇的に改善されました。
ある程度の簿記の知識があれば、会計ソフトの入力さえしていけば、たいていの帳簿は自動で出来上がります。
なので、複数の帳簿を備えているからといって手間が増えるわけでもありません。
手書きの場合はそれぞれの帳簿に記入していく必要がありますが、会計ソフトの場合は自動で作成されるようになったのです。
つまり、記帳していく資料さえきちんと管理し、入力作業を怠らなければ、青色申告に必要な決算書類が作成できるようになりました。
入力作業を怠らなければですけどね。
クラウド会計ソフトの登場
そして近年、記帳を更に楽にしてくれるソフトが登場しました。
それがクラウド会計ソフトです。(詳しくは、「クラウド会計ソフトの導入でバックオフィス業務を楽に、そして経営に注力してみませんか?」をご参照ください。)
クラウド会計ソフト一択ではない
記帳が最も楽になるクラウド会計ソフトの導入をおすすめしますが、必ずしもお客様にとって正解とは言えません。
なぜなら記帳代行や会計ソフト導入やクラウド会計ソフト導入にはそれぞれメリットとデメリットがあります。
「記帳代行」「会計ソフト」「クラウド会計」のメリットとデメリット
それでは、「記帳代行」「会計ソフト」「クラウド会計」のメリットとデメリットをご説明したいと思います。
記帳代行
「記帳代行」とは、記帳のすべてを会計事務所へ丸投げ(外注)する方法です。
記帳代行のメリットとデメリット
- 手間がかかる記帳作業を外部委託することで「本業」に集中できる
- 経理担当者を雇うよりも会計事務所へ委託したほうが人件費がかからない
- 数字(月次決算書)が出来上がるのが遅くタイムリーな経営判断ができない
- 会計事務所とのコミュニケーション不足で資金の流れがうまく会計データに反映されないことがある
- 会計事務所の顧問料のほか、記帳代行料が別途かかることがある
会計ソフト
「会計ソフト導入(自計化)」とは、自分で会計ソフトに入力し、入力し終わった会計データのチェックを会計事務所に依頼(月次監査)する方法です。
会計ソフトのメリットとデメリット
- 数字をリアルタイムで確認しているため会社の状態を常に把握することができる
- 記帳代行料やクラウド会計ソフトのランニングコストがかからない
- 記帳を社長自身が行う場合、入力に時間がとられ「本業」が疎かになってしまうことがある
- 経理担当者を雇う場合、その分人件費が生じる
- 会計ソフト導入や簿記の知識の習得などのコスト(負担)がかかる
クラウド会計
「クラウド会計ソフト導入」とは、現金取引の入力以外を自動化し、会計データを会計事務所と共有(月次監査)する方法です。
クラウド会計のメリットとデメリット
- ネットバンキング対応口座やクレジットカードなどの取引明細を自動取得することにより、大部分の記帳が自動化される
- 自動化させた業務量に対応するマンパワーを他の業務へ振り分けることができる
- 初期設定さえうまく整えれば入力ミスがなくなる
- 会計事務所と会計データを共有することで、よりリアルタイムな経営状況を把握することができる
- Mac・スマホ・タブレットにも対応
- アップデートが自動化され、またバックアップデータの災害による消失リスクが軽減する
- 記帳代行コストがなくなる ・ランニングコストが常に発生する
- 現金取引については手入力が必要
- 初期設定を誤れば間違った処理が継続されるため、自動化がリスクとなる
- セキュリティを外部に委託することになる
「最善の記帳方法」とは
ご説明してきましたように、「記帳代行」「会計ソフト」「クラウド会計」には、それぞれメリットとデメリットがあります。
結局は経営者の置かれている状況によって「最善の記帳方法は異なる」といえます。
会社のデータは、会社で仕上げる。
大きくなっていく会社では自計化が必須だと思います。
意思決定に必要な数字は早ければ早いほうがいいのは間違いありません。
個人事業主や一人社長でも意思決定に必要な数字は早ければ早いほうがいいでしょうし、自身で会計入力を行いながら簿記の知識(数字の話ができる程度で十分です)を習得して、数字を見て判断できる力を養っていく必要があるでしょう。
しかしながら記帳はあくまでもバックオフィス業務であり「本業」ではありません。
経営の本質はお金をきっちり残しながら事業を続けていくことです。
当たり前ですが事業を続けていくためには、「記帳」ではなく「商品を売ること」「サービスを売ること」が大大前提です。
そのためには、未来を見据えた計画が必ず必要となり、その計画がご自身の経営の指針となるはずなのです。
計画を立てても必ずしも計画通りにはいかないでしょう。
むしろいかないのが一般的で、その計画を見直していくためには、「財務」つまり会計データが必要なってくるのです。
まとめ
これまで記帳代行・会計ソフト導入・クラウド会計導入どれがいいの?をみてきました。
当事務所としては、総合的に判断して「クラウド会計ソフト」の導入を推奨します。
しかしもしご自身の置かれている状況が、会社の規模や状況は鑑みて、今は本業に集中して売上を伸ばさなければならない時期だと考えておられるならば「記帳代行」をおすすめします。
餅は餅屋に任せてご自身は「本業」に注力するのもいい選択だと思います。
糸井税理士事務所では、お客様のご要望にあわせて記帳業務を請け負っております。
一部のみをクラウド化し、残りの業務を記帳代行するなど、お客様の置かれた状況を考え適切な方法をカスタマイズさせて対応致しますので是非ご相談ください。